デジタルな未来へ

読書本

共鳴する未来を読んで考えていたことをまとめました。

初版: 2020/09/30

著者: 宮田裕章

デジタルによる豊かさ

単に作業効率を上げるためにテクノロジーを利用する時代は終わろうとしています。企業・国家・学校・病院など組織はデータやテクノロジーを駆使して、人々の生活をあらゆる面でより良い方向で変化することを求められています。

データ・テクノロジーを駆使することで生活が豊かになることをすでに我々は体感しています。Googleでの検索やamazonでの買い物、GoogleAppleスマートフォンの使い心地など、もはや生活になくてはならないものとなっています。これは10年前の世界では考えられませんでした。

このようなTech Giantと呼ばれる企業は、利用者のデータを分析することでユーザ体験(UX)を最適化を継続することに成功しています。

デジタルによる自由

データにより多元的な価値を共有することができれば、生き方のデザインを変えることができます。例えば生まれや性別で銀行からの融資を受けられないというのは自由とはいえないです。ボランティアには貨幣価値がないから参加する価値がないといった悲しい考え方もなくなっていくと考えられます。家族との営みを大切にすることには貨幣には変えられない体験価値があります。

デジタルには貨幣価値だけでない多元的な価値観を可視化できる力があるのです。

プラットフォーマーと個人情報

しかし、テクノロジーを利用する一般市民としては、いくら生活が自由で豊かになるとはいえ、ただデータを明け渡すのにはなにか不安があります。誰か一握りの意思によって生活を握られるのは気持ち悪いのです。

生活を豊かにしつつプライバシーを保つ。データを利用させないというのは生活水準を落とすということ。納得できるデータ利用とはなんだろうか?そう考えていくと、巨大プラットフォーマーに望むのは、データを利用する場合の目的とその範囲が明確にすることのように感じます。

以下のようなことをプラットフォーマーは対応する必要になっていくのではないでしょうか。

  • 通知

    「政府がコロナの対策Aの目的であなたの渡航歴を参照しました。」

    このような情報が後から追跡できるような状況になっていれば、個人情報を提供しても不安ではないと思います。またスピーディーな対応のために逐一ユーザ承認するでは遅いので利用後通知が適切と考えます。

  • 目的結果へのアクセサビリティ

    「コロナの対策AによってAIモデルXを作成し12%の死亡率の減少を実現しました。」

    通知から利用された目的の詳細を見ることができます。ものによっては、ボランティアのような体験価値があると思います。

  • ポータビリティと提供拒否

    「あなたの個人情報をプラットフォームPに移行します」

    プラットフォーマーを変更する権利です。情報提供を拒否する選択もできますが、その場合はプラットフォーマにサービスが制限されるのは致し方ないでしょう。

コモンズとオープンソース文化

プラットフォーマーだけでは耐えられない問題があります。それは国や地域などの領域とは異なる枠で区切られる問題に直面したときです。健康や勉学などの分野で区切ったときに領域で区切りのは得策ではありません。今までこれを国際機関でやってきましたが、これからは様々なプレイヤーが多層的に問題解決に参加できるようになるとよいと考えられます。

ソフトウェアの世界ではすでに誰でも特定の問題解決に参加できるような仕組みがあります。インターネット上にオープンなプロジェクトが展開さていてそれを軸にコミュニティが存在しています。企業内で作られたソフトウェアよりもオープンな環境で作られたソフトウェアのほうが品質が高いと言われており、GoogleMicrosoftも自社製品をオープンソース化しています。オープンソースに貢献することはソフトウェアエンジニアにとって誇りなのです。ただし、決定は権威的に行われます。個人が提出したソースコードをメインストリームに乗せるかどうかはコミュニティのリーダーに裁量があります。

オープンソース文化を参考にコモンズを形成することが良い思います。ただ、どのように決定を下していくのかは慎重に決めていく必要があるように思います。

データの形式の統一

データをつなげる、サービスやUXを民間で開発・利用するためには、データの保存形式の取り決めプラットフォーマー間で決めておく必要があるしょう。インターネットがここまで発展したのはプロトコル(取り決め)がきっちりと決定したからです。

個人を決定するIDや秘匿情報の取り扱いは共通のデータ形式としてプロトコル化し基盤にする。そして必要にお応じてプロトコルのアップデートをかける。プロトコル管理はデータをつなぐ要となります。

まとめ

世界はデジタル化を進めます。デジタルはただ便利になるだけでなく、人々に豊かさと自由を提供する可能性をもつ力です。プライバシーとは、データを共有することとは、自由とは。個人がこれからの世界を真剣に考えなければデジタル社会はいびつなディストピアに向かってしまうのではないでしょうか。