思いを伝える

はじめに

時として、理解できないことを言われることがある。逆に、理解できないと言われることもある。思いを伝えるためには何が必要なのか。思いの背景にある関係、視点、目的、姿勢といった要素に分解して考えてみる。

関係

思いを伝えるためには、自身の置かれた立場を把握し、周囲の関係を意識する必要がある。

以下に、存在している関係を示す。

具体的な関係のカテゴリー

  • 組織内の機能
  • 組織内の役割
    • マネージャー、リーダー、チームメンバー
  • 組織外の関係
    • 株主・利害関係者、エンドユーザー、国・自治体、環境・世界
  • 個人的な関係
    • 家族、パートナー、友人、地域のコミュニティ、オンラインコミュニティ

抽象的な関係のカテゴリー

  • 関与範囲
    • 組織内部、組織外部
  • 責任の程度
    • リーダー層、中間管理層、基盤メンバー層
  • 物理的な距離
    • 同居、地域、国際

関係の度合い

  • 深さ、密度
  • 期間、特定のタイミング
  • 依存度

関係する人数

  • 規模
    • 個人、少数、多数
  • 相互関係
    • 1対1、1対多、多対1、多対多

多様性

視点

どのような思想を中心に据え何を目標に行動しているのか。多角的に視点を把握することで、物事や発言に対する思いの理解が深まる。

以下に関係の中で現れる視点を以下に示す。

友人・家族

  • 中心思想: 相手の感情に寄り添うこと
  • 行動: 誠実さと一貫性を示し仲間になる

顧客

  • 中心思想: 自身の欲求を満たし価値を感じること
  • 行動: サービスを得る

経営

  • 中心思想: 価値のあるサービスの提供
  • 行動: 過去の成功にとらわれず、今必要なサービスを見つけ、それを達成可能な組織の全体最適化と文化を育む

投資

チームメンバー

  • 中心思想: チーム全体の目標達成とメンバーの成長
  • 行動: チームの一員として相互協力し、個々の成長と共通の目標に向かって努力する

テクノロジー・インフラ

  • 中心思想: 最先端科学技術の工学
  • 行動: 便利で効率の良い新しい基盤をつくる

グローバル

  • 中心思想: 世界規模での価値の確立
  • 行動: 国際状況を把握し、立ち位置を明確にする

目的

発言の中にある思いには目的がある。その目的を達成するための思考を巡る。

考えられる思いの目的とそこで働く思考を以下に示す。

発想

良いアイデアを創造するには、深い洞察と柔軟な発想が必要となる。また、異なる分野や視点を統合し、独自の視点からアプローチすることが不可欠。

  • 一人で考える

    チームワークは作業に向いているが思考には適していない。ブレインストーミングよりも一人で集中して考えるほうが良いアイデアが生まれやすい。

  • 多様な経験と考察

    神経科学によれば、すべての思考は記憶によって作られており、アイデアもまた知識の中にある既存の事例や良い部分を抽出して組み合わせることで生み出されている。よって、アイデアが出ないというのは、体験が不足しているか、体験したことを深く分析していないこと原因である。

決断

決断とは、現状から最適な選択をすること。決断はスピード感や多角的視点、柔軟な姿勢が重要となる。これらを織り交ぜた、楽観的で心配性な姿勢が最適な決断を可能にする。

  • スピード感

    決断の速さは競争の優位性を生み出す。データが不足しているような不確実な状況下であっても、即座に行動することが求められる。

  • 多角的視点

    決断はスピードだけでなく、現状ある関係の把握し、多角的視点を利用し、最大の結果になるようにしなければならない。視点の把握漏れは判断の誤りに直結している。

  • 柔軟な姿勢

    決断の結果に対する柔軟な姿勢は、持続的に良い結果を出すことにつながる。進む過程で見える視点は変わるし、時代によって変化する。失敗を恐れずに受け入れる。それがより良い結果へ軌道修正を可能にする。

広報

広報は価値を広く知らせ、仲間の獲得に貢献する手段である。以下の点を考慮する。

  • 認知され価値になる

    どれだけ良いこと・ものがあったとしても、知ってもらわない限り無いのと同じだ。全く無名なら地道に身の回りから認知を獲得し、拡大し、繰り返し広報するしかない。本当に良いものとして認知の輪が色濃く広がることでブランドが確立する。

    迷惑をかけるような広報はいけないが、社会への認知のために過大になってしまうことは致し方無い部分がある。

  • 寄ってくるフリーライダーへの対処

    広報で過大広告をすると採用の面で問題解決できる人材ではなくフリーライダー(ただ乗りする人)が寄ってくる。問題解決できる人材とフリーライダーは表裏一体である。フリーライダーを問題解決できる人材に変えていかなければ、広報と採用のコストが無駄になる。

  • 広報とビジョンは一致する必要はない

    現場感から遊離した過大広告を組織のビジョンに関連付けることで盲目的な組織愛が生み出される。それが意見や状況の変化を無視し、何を言っても無駄な組織に変えてしまう。広報は広報として組織内部に持ち込まないようにするのが良い。

組織的問題解決

問題解決のための組織は、事業や顧客に向かう時間を最大化するためにあるべき。そこで組織的問題解決においては、以下の点に留意する必要がある。

  • 最小限の組織施策・マネジメント

    組織施策・マネジメントを必要最低限にして、事業や顧客に向かう時間を最大化する。

    外部評価のための施策はやめる。例えば、MVVの刷新、オンライン教育、評価制度の見直し、1on1制度、コーチングなどを何も考えず実施しない。

    チームのだれか一人がマネジメントを請け負うのではなく、メンバー一人ひとりが組織を良くするためにセルフマネジメントをする。

  • 組織を変える人が役職者

    能力を発揮できない役職で滞留するような昇進制度は、最終的に組織全体の能力までも無くす。組織を変えたいとする人がその権限を持って組織すべき。

絆を深める

深い絆を育むためには、心を開き、相手を根気よく理解することが必要となる。以下に要点を示す。

  • 相手は慎重に選ぶ

    絆を深めるためにはポジティブな感情だけでなく、時には拒絶的な感情を受け入れる必要がある。だからこそ、関係を深める相手は慎重に選択する。

  • 目線を合わせる

    意見やアドバイスで返すのではなく、質問や確認を通じて相手を理解しようとする姿勢が絆を深める。同じ目線に立ち、互いの欲求や意図を確かめる。

  • 無目的な発言

    無目的な発言は絆を深めることが目的である。無目的な発言に耳を傾けることは時間的にも精神的な余裕が必要となる。大切にしたい相手にだけ、発言から感情のベールを剥がし本当の目的を受け取るようにする。

姿勢

理解したいと思う姿勢が理解につながる。

個人があるべき姿勢を以下に示す。

反射的な反応をしない

反射的に反応してしまうと、的確な判断や表現を妨げる。発言する前に状況を十分に把握し、冷静に思考できない場合は、一時的な距離を置くようにする。練り込んだ思考だけを伝えるようにする。

問題の構造に着目する

問題をどうしても特定の個人に押し付けようとしてしまう。しかし、問題の原因はその背後にある構造によるものだ。起こってしまった問題は仕方がないと考え、構造に着目し問題を解決する。

文脈を把握する

思いを伝える言葉は、常に特定の文脈や状況に基づいている。文脈の異なる関係間でそれを無視すれば意思疎通できない。言葉の意味を深ぼる姿勢をとり、価値観に浸かって文脈を理解する。ただの部外者の発言では響かない。

具体例の利用

具体例は言葉の抽象度を下げ、思いに手触り感を出す。ストーリ、データ、固有名詞を使うことで、話の解像度があがり認識を合わせることができる。

相手を明確にする

相手が明確であるほど思いが乗る。聞きたい、読まれたいと思う言葉を選択しないと思いは誰にも伝わらない。伝えようと思う相手は未来の自分でもいい。逆に言葉を受け取るとき、その伝えたい相手を想像してみる。その言葉の裏側にある意図が読めてくる。

ポジショントークを避ける

自己の立場や地位に囚われず、問題の本質や解決策に焦点を当てる。自身の価値観について深く思考し主張していなければ、立場で話すことしかできなくなる。

アドバイスを求める

客観的な視点を持つことは難しい。自身に似合う服を選ぶのでさえ難しいことだ。言葉が適切に伝わっているかどうかを判断するのは難しい。他者からどう見られたか、どう感じたかと言ったフィードバックは価値がある。

まとめ

状況に合わせて関係、視点、目的、姿勢を重ね合わせることで、思いが伝わる言葉選びができる。自身が冷静でないと見落としてしまいそうなことがあまりにも多く、伝える相手の優先順位や状況によって、あえて伝えないことも一つの手段となる。

相手の立場や視点を尊重し発言を分析するとき、納得できる余地を生み出すことができる。それが心の余裕につながっていく。多くの人が伝えたいと思う意識が重なり合い、思いが伝わる関係が広がっていくように思う。

LLMとユニークなロギング

参考

落合陽一:2024年は超AIが来る

LLMと教育

2020年後半、コロナウィルスのまん延により従来の教育の方法の代替を余儀なくされた。そこでオンラインミーティングツールや動画の利用が行われ、結果として場所や時間に縛られずに優れた教育ができることを実感した。今後はそれに加え、LLMを駆使して個別最適化された教育が進展していく。だれでもものごとを深掘りできるようになる。学校の役割はスキルの習得において減少し、それに伴って社会全体の様々な価値が変わっていく。

LLMとの親和性のある人間

AIと高い親和性を持つ人間が大成する。藤井聡太氏の活躍は、この観点を強調している。「人間の作業がAIに奪われるのではなく、AIを巧みに利用できる一部の人間に奪われる」という言説はおそらく正しい。知的労働は新たな領域も開拓されるだろうが、一部の人間に集中し縮小していくのだろう。

文部科学省のガイドラインから明らかなように、日本政府はLLMの利用に対して慎重でありつつ前向きで、子供たちが早い段階からリテラシーを身につけるよう奨励している。LLMに触れる人数の絶対数が増えることで、LLMとの親和性が高い人間がより多く現れると予測される。

人間のコモディティ化を防ぐ

古い教育方針やビジネス本に書かれたようなやり方では、人間がコモディティ化することになる。それが意味するのは人間がLLMと代替可能になってしまうということだ。

他者が理解しにくい課題にあえて積極的に取り組み、自信を持って探求する姿勢が求められる。

独自LLMが簡単に作れるGPTs

2023年11月にOpenAIが提供を開始したGPTsは、LLMを個人の好みに調整できる新しい機能だ。何と言っても簡単に作れる。だからこそ、そのソースになる情報の取得と構築が魅力的なGPTsを作り出す鍵となる。

自己ロギング

GPTsを使うことで、自己の分身となるようなAIを作成することが可能となる。自分を複製できれば生産性をどこまでも伸ばせる。それには、自分自身の活動データを記述すること、つまり自己ロギングが重要になってくる。素のGPTとは異なるユニークな人間を形づくるにはユニークな活動から得たユニークな思考が必要となる。

所感

自分を複製できたら楽しいだろうと考える。GPTで十分というのは悲しいので、もっと多角的で他分野にわたりインプットし、ミックスして、ユニークにロギングしていきたい。

SNSと脳の作用

参考

The Internet is Worse Than Ever – Now What?

フィルターバブルの神話

従来、SNSは「フィルターバブル」という現象により、個人に適した情報を増幅し、反対意見を排除すると考えられていた。しかし実際のところは、現実世界の他者との交流の方がずっと強い「フィルターバブル」が存在し、イデオロギー的に隔離されている。SNSにはむき出しの多様性があり、ゆえに考え方の違いに悩まされることが多い。

SNSの多様性を脳はさばききれない

情報技術の進展により、人類がアクセスできる情報は多様で膨大になった。しかし、その情報を受ける人間の生物学的な構造は狩猟時代からほとんど進化しておらず、この状況に適応できていない。人間の脳は、生存戦略として社会構造を構築することに重点が置かれており、異なる意見や情報に対する受容が難しくなるようにできている。この脳の特性を「社会的選別(Social Sorting)」と呼ぶ。人間は自分の考えの外側を簡単には受け入れられないのだ。

さらに、アテンション・エコノミーがこの問題を助長している。アテンションを引くためのアルゴリズムや言葉は、極端で攻撃的な発言を誘発し「社会的選別」により強い共感や反感を生み出す。現代の人類は経済のためにSNSを介して脳が踊らされているのかもしれない。

意図的な分断

人間の脳はすぐには進化しない。脳の持っているバイアスを理解し情報に接することも重要だが、自分の外側=仕組みの部分を変えるにはどうすればいいのだろう。

実は、現人類の脳に合ったモデルがすでに存在している。それはSNS以前のインターネットだ。掲示板/フォーラム/ブログなどが分かれて存在し、接続を維持するアルゴリズムがなく、多様な集団を形成している。小集団には独自の文化や奇妙なルールがあり、どこか現実の生活に似ている。

あえて、意図的に分断する。「社会的選別された」小さなオンラインのコミュニティになることが、脳の負担を軽減し、多様性を理解するシンプルで効果的な解決策なのかもしれない。

まとめ

SNSの多様性を脳はさばききれない。人間は根本的に、意見の相違を認めることが困難な生物である。なので、あえてインターネット上でも意図的に分断することで、違いの壁を把握し、相互理解を促進できるようになる。

東洋思想を通してみる世界

はじめに

量子物理学者カルロ・ロヴェッリは、「時間というものはなく、すべては関係によって決まる」という見解を示しました。────────世界は変化でできている。

重力の強さで時間の流れが変化する理由を説明できるこの見解に、私は直感的に惹かれました。これは私が東洋思想的な考えをもっていて、それに起因しているためだと考えました。東洋思想は科学以外の領域でも注目されており、システムエンジニアリングにおけるアジャイル開発や、持続可能な世界を目指すSDGsなどの文脈でも重要視されています。自分の思考を深めるために、今一度、東洋思想の理念や特色についてまとめてみます。

概要

東洋思想とは、人間と社会のあり方について独創的な視点を提供する東洋的な考え方の集合体といえます。文化や宗教の枠を超えて、人間の普遍的な経験や知恵を表現しています。

自然

東洋思想では、人間は自然界の一員であり、自然と調和し尊重することが重要視されます。自然は私たちに恵みを与えるだけでなく、私たちが一体となって生きていくための基盤でもあります。日本では、神道や仏教などの宗教や文化が、自然と人間とのつながりに深く関わっています。例えば、日本の神道における「八百万の神」という概念は、日本の風土や自然環境に由来し、自然と神々、そして人間とのつながりを強調しています。また、四季折々の自然や文化を楽しむ姿勢も見られます。

他者

東洋思想では、人間は孤立した存在ではなく、他の人々との関係性の中で定義されます。人々が互いに尊重し合い、調和のある関係を築くことは、人間関係や社会の健全性にとって不可欠です。対話や協力、共感や共存の原則である「和」を重んじることがその表れです。

変化

東洋思想では、過去や未来に囚われるのではなく、現在を生きることが重視されます。般若心経の一節にある「色即是空・空即是色」や仏教の教えである「諸行無常」は変化を捉える上で重要な考え方です。これらの概念は共通して、この世に絶対的な事物は存在せず、万物が常に変化し続けているという考えを示しています。この考え方は、人生や世界の流動性と変化に対して柔軟な心を持つことを助けます。変化と不確実性を受け入れることで、人々は自己成長や学びの機会を見出し、新たな可能性を開拓することができます。

  • 色即是空: 全てのものは無である
  • 空即是色: 全てのものは無から変化することによって万物に生まれ変わる
  • 諸行無常: 全てのものは変化している

自己

東洋思想では、人間の内面的な成長や自己探求が重要視されます。物質的な欲望や執着にとらわれずに生きることは、心の平和と精神的な解放をもたらすとされています。仏教では、物質的な欲望や執着から解放された状態を「涅槃」と呼びます。禅宗では、「涅槃」に至るために座禅と瞑想を行い、自己やそれを取り巻く世界を「俯瞰」することで、心を安定させます。

美徳

東洋思想では、「感謝」することの美徳が高く評価されます。「感謝」は喜びや幸福の源泉となります。他者への「感謝」は人間関係の質を高め、自己の心の平穏や幸福感を向上させ、他者とのつながりや社会的な結束を深めます。また、あたりまえなことに目を配り「感謝」する姿勢は些細な変化に気づくために重要となります。

美意識

東洋思想の中でも、特に日本には「侘び寂び」という美意識があります。「侘び寂び」は、物事の一時的で流れる美しさや、過ぎ去っていく時間の哀愁を感じることを通じて、人々に深い感銘を与える力を持っています。また、「侘び寂び」は完璧を求めるのではなく、むしろ不完全さや傷つきやすさを受け入れることを重視します。

  • 侘び: 簡素さ、控えめさ
  • 寂び: 静けさ、儚さ

なおこの記事のトップ画像は、bingのImage Createrで「wabi sabi」と入力して生成されたものです。

まとめ

東洋思想は、世界が変化し続けていることを理解し、今という瞬間を生きることの大切さを主張します。変化を楽しんだり、美しく感じたり、調和する姿勢が、心の平穏や人生の充実につながっていくように思いました。

認識と共感

参考

宣伝大臣 ゲッベルス 〜ヒトラーに熱狂したプロパガンダの悪魔〜

認識は意図的に歪めることができる

認識は、文字/映像/言葉を媒介にして存在するファクトを消したり、書き換えたり、編集することによって、意図的に変えることができます。 メディアから得られる情報は、すでに編集された情報であり、それが我々の日常生活の基本情報になります。 この事実を常に意識しなければ、意図的な情報操作によって意思を操作されてしまう可能性があります。 しかし、全てを疑うことは現実的ではないため、情報リテラシーを駆使し、バランスを取りながら考えることが重要です。

共感による認知操作

エンターテインメントは最大の宣伝/広告手段となります。映画や音楽などを通して観客の共感を引き出し、極端に言えば思考を操作することが可能です。 人間は感情に訴えることで説得されやすい傾向があります。このような認知バイアスに気づくことが、情報リテラシーの一つだと思います。 共感は心地よく、私たちは誰かと共感することで一体感を感じることができます。

かつて扇動の天才と言われたヒトラーゲッペルスは、「プロパガンダとは感情に訴えるものであり、知性に訴えるものではない」と言いました。 人間はファクトよりも物語的なものに興味を持ち、その瞬間の感情で行動してしまいがちです。 ただ単に共感することを避ける手段として、ファクトを重視し、多角的に物事を考え、自己の認知プロセスを見つめ直すことが大切になります。

まとめ

情報を受け取る側としては、情報に反射的に行動せず、情報リテラシーを駆使し、権威や心地の良い共感の物語には特に注意を払う必要があります。 発信者としては、共感は強い力を及ぼすことを理解し、悪用すべきものではないです。目指すべきは教養の書でいうところの「共感なき連帯」であろうと思います。

金利を変動させるということ

モチベーション

金利が上がると債権価値は下がる」

最近よく金利の話題を耳にするのでまとめてみました。

金利引き上げ時の影響

金利が引き上げられると株式/債権の価値は減少する傾向があります。

金利引き下げ時の影響

金利が引き下げられると株式/債権の価値は上昇する傾向があります。

おまけ

ChatGPTに「金利が引き上げられることで、債権価値が減少するメカニズム」について質問してみたのでその回答を乗せておきます。

金利が引き上げられると、債券市場では以下のようなメカニズムが働いて債権価値が減少します。

  1. 新しい債券の発行利回りの上昇:金利が引き上げられると、新しく発行される債券の利回りが上昇します。これは、市場がより高い金利を求めるようになるためです。したがって、既存の債券よりも高い利回りを持つ新しい債券が市場に現れることになります。これにより、既存の債券の価値が減少します。

  2. 既存の債券の利回りの相対的な低下:金利が引き上げられると、市場において、利回りが上昇しない債券に投資することはリスクが高くなります。したがって、既存の債券の利回りが引き下げられ、相対的に低下することになります。これにより、既存の債券の価値が減少します。

  3. 持続期間の長い債券の価値の低下:金利が引き上げられると、将来のキャッシュフローの割引率が上昇するため、持続期間の長い債券の価値がより大きく減少します。このため、長期債券は短期債券よりも価格変動が大きくなる傾向があります。

これらの要因が複合的に作用するため、金利が引き上げられると、債権価値が減少する傾向があります。

アテンション・エコノミーからの解放

承認と経済

人間は自分自身を肯定する時に喜びを得ることができる。人は承認の奴隷である。

現代ではテクノロジーによって、承認を数値として確認することができる。いいねやページビューは承認だ。企業やマーケターはアテンションで人々を引き付け、承認によって関係性を構築し、サービスを提供して利益を得る。この承認を促すアテンションに焦点をあてた経済がアテンション・エコノミーである。これは今に始まったことではなく、テクノロジーによって加速している。

誰かに受け入れられることは悪いことではない。問題はその方法だ。承認を得るために過激なアテンションが盛んに行われている。

容易に承認される方法としての論破ゲーム

論破のゲームが蔓延している。テレビ番組でもニュースサイトのチャット欄でもどこでも見られる。このゲームは言葉によって人を言い負かし、勝者を決める議論にみせかけたゲームだ。その基本的な構造としては「異なる意見を持つ対立の陣営を配置し、その光景を眺めるその他大勢の観客」といった具合で、さながら中世のローマのコロッセオのようだ。

ただ、このゲームの勝敗は観客が大体勝手に決めている。そのためゲームの発言者は観客への勝利の演出が大切になる。そしてその方法は大体決まっている。それは「極論を言うこと」「無難な当たり障りのないことを言うこと」「切り取って揚げ足を取ること」「強い語気を使うこと」だ。これだけで承認を得られる可能性が高まる。観客はただその光景を見ているだけだが、自分を重ね合わせることで承認欲求を満たすことができる。

議論や問題解決をするのであれば、そんな観客へのアピールなんていらない。最適な選択をグラデーションの中で悩みながらトレードオフする。間違ったらまた迷って修正する。複雑な問題を分解して関係を理解し、大きく小さく多角的に考える。論破ゲームはアテンションを引きつけ感情を揺さぶり共感を生み出し、仲間を見つけようするだけだ。悲しいことにもしかするとそれが人間の本能なのかもしれない。

承認システムと簡略化された情報

お金、フォロワー数、いいね、ページビュー。我々が目にするこれらの数値は管理しやすい簡単な情報に簡略化されている。どういう文脈で、あるいはどういう理由で加算されたものか見分けがつかない。

しかし、この単純すぎる数値には経済を回す力がある。ソーシャルメディア上ではいつでも強制的に比較され、順位付けのゲームが好きな人のコンプレックスを強烈に刺激する。世界への影響力と直結しているように思えるから、なんとしても増加させたくなる。より多くの承認を得て気持ちよくなりたいと考えてしまう。

その結果、以下のような負の承認システムが出来上がる。

  1. 論破ゲームに巻き込まれている人や団体に対する極論に対して「いいね」する
  2. 「いいね」した発言を真似て発言する
  3. 「いいね」をもらう
  4. 別の人がそれを真似する

企業やメディアの賢い人達は極論や強い語気をぶつければ「釣れる」ということを理解していて、記事にフックになるワードをちりばめて誤解を招くことを承知でアテンションする。上記の負の承認システム上では内容よりも情緒が優先され、過激さによってシステムがより加速し数値が増加していく。過剰なアテンションで人を無駄に不安にさせたり誤った判断をさせたりして人を不幸にすることは間違っている。

そんなやり方で得た数値に価値はあるのかよくわからない。信用なんてあるとは思えない。雑な数値がはびこる雑な世界だと私は思う。システムが作り出した数値で人の価値なんて簡単に決められない。

テクノロジーにより意図的に承認を作り出すという処方箋

承認を得ないと人は不健康になる。しかし承認を得るために公共の場で論破ゲームなんてやるくらいなら、テクノロジーを駆使してAIに優しい言葉をかけてもらったほうが良いのではないかと思う。

実際、ChatGPTを代表にAIの進化はめざましい。自分の投稿とした写真やコメントに対して簡単な感想コメントだけなら、それがAIなのか人間であるかどうかは、もはや区別できない。自分の写真や文章の投稿に対して、意味を汲み取りつつ「いいね」「おもしろいね」、究極「生きてるだけでえらいね」的コメントを絶妙なタイミングでしてくれれば気分は良くなると思う。過剰に自分の都合が良くなりすぎないようにアドバイスの強度を調整できるオプションがあってもいい。AIは観客になる。

不平不満が趣味な人々には、定期的にAIでフェイクニュースで話題を提供し、それを叩いてもらって憂さ晴らしさせてあげるとよい。テクノロジーで意図的に承認を作り出すことで、誰も無駄に傷つけ合わないで済む。ネガティブな感情は空虚に消える。

自分自身に向き合う

人は承認の奴隷である。それは変えようがない。ただ、もっと重要なのは「自分は自分を承認できる」ということに気づくことだと思う。

比較なんてしてる暇ないくらいに、まずは自分自身を承認できるように生きていることを誇れるように精一杯やってみる。努力の結果で自分自身を認めることが一番の承認体験になる。他人や社会にとって良いとされることに対して興味がなくなっていく。そうすればアテンションに振り回されづらくなる。

とはいえアテンションで駆動する経済は以前社会には存在しているし、どうしても人は人に嫉妬してしまう。当分このシステムから開放されることはないのだろう。

所感

多くの人が気軽な承認の魔力に惑わされなくなれば世界はアテンションの経済から開放される。しかしながらこの問題は根深い。今のところは個人的に距離を取るしかない。どのように距離を取るか箇条書きでまとめる。

  • 自己承認できるように好きなことに全力で取り組む
  • 数値を安直に判断しない
  • 注目のために人を傷つけたり、誤解を招くようなことをしない

テクノロジーで無駄な争いを減らせるかもしれない。もっと人々が自分自身を大切にできるテックを創造したい。