東洋思想を通してみる世界

はじめに

量子物理学者カルロ・ロヴェッリは、「時間というものはなく、すべては関係によって決まる」という見解を示しました。────────世界は変化でできている。

重力の強さで時間の流れが変化する理由を説明できるこの見解に、私は直感的に惹かれました。これは私が東洋思想的な考えをもっていて、それに起因しているためだと考えました。東洋思想は科学以外の領域でも注目されており、システムエンジニアリングにおけるアジャイル開発や、持続可能な世界を目指すSDGsなどの文脈でも重要視されています。自分の思考を深めるために、今一度、東洋思想の理念や特色についてまとめてみます。

概要

東洋思想とは、人間と社会のあり方について独創的な視点を提供する東洋的な考え方の集合体といえます。文化や宗教の枠を超えて、人間の普遍的な経験や知恵を表現しています。

自然

東洋思想では、人間は自然界の一員であり、自然と調和し尊重することが重要視されます。自然は私たちに恵みを与えるだけでなく、私たちが一体となって生きていくための基盤でもあります。日本では、神道や仏教などの宗教や文化が、自然と人間とのつながりに深く関わっています。例えば、日本の神道における「八百万の神」という概念は、日本の風土や自然環境に由来し、自然と神々、そして人間とのつながりを強調しています。また、四季折々の自然や文化を楽しむ姿勢も見られます。

他者

東洋思想では、人間は孤立した存在ではなく、他の人々との関係性の中で定義されます。人々が互いに尊重し合い、調和のある関係を築くことは、人間関係や社会の健全性にとって不可欠です。対話や協力、共感や共存の原則である「和」を重んじることがその表れです。

変化

東洋思想では、過去や未来に囚われるのではなく、現在を生きることが重視されます。般若心経の一節にある「色即是空・空即是色」や仏教の教えである「諸行無常」は変化を捉える上で重要な考え方です。これらの概念は共通して、この世に絶対的な事物は存在せず、万物が常に変化し続けているという考えを示しています。この考え方は、人生や世界の流動性と変化に対して柔軟な心を持つことを助けます。変化と不確実性を受け入れることで、人々は自己成長や学びの機会を見出し、新たな可能性を開拓することができます。

  • 色即是空: 全てのものは無である
  • 空即是色: 全てのものは無から変化することによって万物に生まれ変わる
  • 諸行無常: 全てのものは変化している

自己

東洋思想では、人間の内面的な成長や自己探求が重要視されます。物質的な欲望や執着にとらわれずに生きることは、心の平和と精神的な解放をもたらすとされています。仏教では、物質的な欲望や執着から解放された状態を「涅槃」と呼びます。禅宗では、「涅槃」に至るために座禅と瞑想を行い、自己やそれを取り巻く世界を「俯瞰」することで、心を安定させます。

美徳

東洋思想では、「感謝」することの美徳が高く評価されます。「感謝」は喜びや幸福の源泉となります。他者への「感謝」は人間関係の質を高め、自己の心の平穏や幸福感を向上させ、他者とのつながりや社会的な結束を深めます。また、あたりまえなことに目を配り「感謝」する姿勢は些細な変化に気づくために重要となります。

美意識

東洋思想の中でも、特に日本には「侘び寂び」という美意識があります。「侘び寂び」は、物事の一時的で流れる美しさや、過ぎ去っていく時間の哀愁を感じることを通じて、人々に深い感銘を与える力を持っています。また、「侘び寂び」は完璧を求めるのではなく、むしろ不完全さや傷つきやすさを受け入れることを重視します。

  • 侘び: 簡素さ、控えめさ
  • 寂び: 静けさ、儚さ

なおこの記事のトップ画像は、bingのImage Createrで「wabi sabi」と入力して生成されたものです。

まとめ

東洋思想は、世界が変化し続けていることを理解し、今という瞬間を生きることの大切さを主張します。変化を楽しんだり、美しく感じたり、調和する姿勢が、心の平穏や人生の充実につながっていくように思いました。