2つのレイヤーを生きる

「物理」と「関心」による関係

我々の社会には大きく2つの組織関係がある。物理的(地理的)な制約によって成るコミュニティと、共通の関心事によって成るアソシエーションだ。この2つの組織関係について考えてみる。

心に近いコミュニティ

コミュニティは人々が物理的に接触することによって自然発生する関係だ。この関係を回避する方法は、異なる場所に移動すること以外にない。このコミュニティは地方の行政と協力し、地域の物理的要素を管理および構築することで、住民の基本生活水準を安定させる役割を果たす。

また、コミュニティの行事は地域の伝統や風習に基づき、コミュニティの一体感を高めたり、一時的なストレスの解消に役立ったりする。コミュニタリアン的な言葉で語ると「位置を確認し、帰属意識のようなもの」が育まれる場所である。

アソシエーションの加速

コミュニティに対してアソシエーションは共通の目的や関心事によって生まれる関係である。テクノロジーの進歩により、アソシエーションをとてつもなく構築しやすくなった。自宅からでもインタラクティブにリアルタイムで海外と交流したり、SNSで共通の関心事を持つ人々と出会うことができる。通貨を作り、オンラインサロンを開き、人を集め、守るべきルールを決めれば、まるで仮想的な国を個人で作れてしまう。

しかし、アソシエーションを形成することは容易になったが、個人の悩みを深くまで相談するような関係を築くことが難しくなったように感じる。日本において会社はコミュニティ的な側面が強かったように思う。しかし、テレワークの推進や転職率の増加、成果主義によってアメリカ的な脱コミュニティに向かっている。生産性は上がるが、精神的にきつくなる。

教育はそのどちらの側面も持つ

「学力などのスキルの能力の向上」はアソシエーションに関わることで深く学べる。数十年前に比べると地方と都市の差は圧倒的であったが、今はインターネットによって地方でも質の高い教育を受けることができるようになった。これから学校は学力の向上よりも地域に根ざし、コミュニティに重きをおいて社会性を育む場所となるように思う。

アソシエーションの関係は目的が一致しなくなるとすぐに破綻する。会社の新人研修のような場は、コミュニティ的に会社における居場所を見つける場にしたほうが良いのかもしれない。スキルの教育はその後でOJTで学ぶのがよさそうだ。

まとめ

組織関係にはコミュニティとアソシエーションの2つのレイヤーがあり、その特性を理解した上で関わっていく必要がある。組織を作るならばなおさらだし、そのどちらの側面をもつ教育はどこに力を入れているかの制御が不可欠だ。また、組織関係はいつでも変えられるということを忘れないようにすることも大切そうだ。